移住を検討する際、生活コストは最も気になるポイントの一つです。特に住居費は家計の中で最大の固定費であり、地価の安い地域に移住することで、同じ収入でもゆとりある暮らしを実現できます。
この記事では、国土交通省の地価公示データをもとに、住宅地の平均地価が安い自治体をランキング形式で紹介します。ただし「安い」だけでなく、財政力指数0.3以上という条件を設け、行政サービスが一定水準以上の自治体に絞っています。
1. 生活コストと移住
住居費は家計の中で最大の支出項目です。総務省の家計調査によれば、住居関連費(家賃・住宅ローン・修繕費等)は家計支出の大きな割合を占めます。地価が安い地域に移住することで、この固定費を大幅に削減できます。
地価は住居費だけでなく、その地域の物価水準とも相関する傾向があります。地価が安い地域では、駐車場代、店舗の賃料を反映した商品価格なども都市部より安い傾向にあり、総合的な生活コストの低減につながります。
地価の基準
マチスコアに掲載されている自治体で地価データがある自治体の中央値は27,200円/m²です。この値を下回る自治体は658市区町村あります。ただし、地価は同一市区町村内でも地区によって大きく異なるため、実際の移住検討時には個別の地区単位で確認することをおすすめします。
2. 「安い」だけで選ばない
地価が極端に安い自治体には、人口減少が著しく行政サービスの維持が困難になっているケースもあります。本ランキングでは、この問題を避けるために以下の条件で絞り込んでいます。
人口2万人以上
一定の人口規模がある自治体に限定。スーパーマーケット、病院、学校といった生活に必要な施設が揃っている可能性が高くなります。
財政力指数0.3以上
財政力指数が極端に低い自治体を除外することで、道路整備、ゴミ収集、公共施設の維持など、基本的な行政サービスが一定水準以上の自治体に絞っています。
注意
地価が安い理由には様々な要因があります。交通の不便さ、自然災害リスク、産業の衰退などが地価に反映されている場合もあります。地価の安さだけでなく、移住先の実際の生活環境を現地で確認することが重要です。
3. ランキング TOP50
人口2万人以上・財政力指数0.3以上・地価データありの自治体を平均地価が安い順に並べたランキングです。
| 順位 | 自治体名 | 平均地価(円/m²) | 最安地価 | 財政力指数 | 空き家率 | 人口 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 北海道 滝川市 | 6,467 | 2,000 | 0.40 | 17.1% | 39,490 |
| 2 | 茨城県 行方市 | 6,525 | 5,180 | 0.43 | 15.2% | 32,185 |
| 3 | 北海道 紋別市 | 7,733 | 5,500 | 0.32 | 13.7% | 21,215 |
| 4 | 鹿児島県 曽於市 | 8,315 | 5,600 | 0.30 | 22.3% | 33,310 |
| 5 | 茨城県 稲敷市 | 8,764 | 6,200 | 0.48 | 15.9% | 39,039 |
| 6 | 茨城県 鉾田市 | 8,973 | 6,100 | 0.46 | 20.2% | 45,953 |
| 7 | 山口県 美祢市 | 9,458 | 3,280 | 0.38 | 24.2% | 23,247 |
| 8 | 秋田県 男鹿市 | 9,577 | 5,900 | 0.35 | 23.2% | 25,154 |
| 9 | 秋田県 鹿角市 | 10,240 | 2,860 | 0.32 | 22.3% | 29,088 |
| 10 | 北海道 岩見沢市 | 10,300 | 3,900 | 0.38 | 15.2% | 79,306 |
| 11 | 熊本県 阿蘇市 | 10,700 | 8,500 | 0.35 | 18.9% | 24,930 |
| 12 | 北海道 稚内市 | 10,833 | 8,900 | 0.39 | 15.0% | 33,563 |
| 13 | 鹿児島県 志布志市 | 10,850 | 9,400 | 0.38 | 25.2% | 29,329 |
| 14 | 大分県 国東市 | 11,030 | 9,560 | 0.30 | 25.0% | 26,232 |
| 15 | 北海道 根室市 | 11,067 | 10,300 | 0.34 | 16.5% | 24,636 |
| 16 | 茨城県 八千代町 | 11,083 | 8,950 | 0.63 | 12.2% | 21,026 |
| 17 | 北海道 留萌市 | 11,467 | 9,700 | 0.32 | 19.3% | 20,114 |
| 18 | 宮城県 登米市 | 11,508 | 4,350 | 0.36 | 14.8% | 76,037 |
| 19 | 栃木県 那須烏山市 | 11,525 | 8,300 | 0.45 | 20.0% | 24,875 |
| 20 | 秋田県 潟上市 | 11,810 | 5,660 | 0.33 | 14.9% | 31,720 |
| 21 | 鹿児島県 南九州市 | 11,860 | 6,140 | 0.35 | 25.6% | 33,080 |
| 22 | 北海道 登別市 | 11,922 | 1,480 | 0.46 | 18.0% | 46,391 |
| 23 | 長崎県 松浦市 | 12,047 | 8,040 | 0.54 | 20.9% | 21,271 |
| 24 | 青森県 黒石市 | 12,050 | 11,800 | 0.36 | 12.6% | 31,946 |
| 25 | 秋田県 能代市 | 12,240 | 6,800 | 0.46 | 20.1% | 49,968 |
| 26 | 大分県 豊後高田市 | 12,277 | 9,130 | 0.30 | 26.8% | 22,112 |
| 27 | 鹿児島県 指宿市 | 12,310 | 4,080 | 0.36 | 24.8% | 39,011 |
| 28 | 北海道 新ひだか町 | 12,350 | 11,100 | 0.33 | 20.6% | 21,517 |
| 29 | 茨城県 潮来市 | 12,359 | 4,830 | 0.49 | 14.3% | 27,604 |
| 30 | 青森県 むつ市 | 12,475 | 5,700 | 0.37 | 20.8% | 54,103 |
| 31 | 秋田県 横手市 | 12,795 | 4,720 | 0.33 | 13.1% | 85,555 |
| 32 | 秋田県 にかほ市 | 12,900 | 6,000 | 0.35 | 16.4% | 23,435 |
| 33 | 千葉県 山武市 | 13,042 | 9,300 | 0.49 | 13.7% | 48,444 |
| 34 | 岩手県 八幡平市 | 13,050 | 10,900 | 0.30 | 36.1% | 24,023 |
| 35 | 栃木県 那須町 | 13,150 | 10,900 | 0.74 | 61.7% | 23,956 |
| 36 | 千葉県 横芝光町 | 13,150 | 10,000 | 0.46 | 17.1% | 22,075 |
| 37 | 佐賀県 白石町 | 13,520 | 7,440 | 0.34 | 15.8% | 22,051 |
| 38 | 鹿児島県 鹿屋市 | 13,529 | 3,700 | 0.48 | 19.3% | 101,096 |
| 39 | 石川県 羽咋市 | 13,600 | 10,600 | 0.42 | 19.8% | 20,407 |
| 40 | 茨城県 小美玉市 | 13,694 | 6,250 | 0.60 | 16.5% | 48,870 |
| 41 | 福島県 田村市 | 13,704 | 5,900 | 0.34 | 12.1% | 35,169 |
| 42 | 鹿児島県 出水市 | 13,833 | 12,300 | 0.42 | 18.5% | 51,994 |
| 43 | 北海道 中標津町 | 14,033 | 12,900 | 0.42 | 18.2% | 23,010 |
| 44 | 青森県 おいらせ町 | 14,060 | 5,700 | 0.46 | 10.5% | 24,273 |
| 45 | 福井県 勝山市 | 14,100 | 13,200 | 0.42 | 13.8% | 22,150 |
| 46 | 三重県 志摩市 | 14,251 | 6,610 | 0.38 | 31.0% | 46,057 |
| 47 | 山形県 庄内町 | 14,500 | 11,500 | 0.30 | 15.7% | 20,151 |
| 48 | 山梨県 北杜市 | 14,500 | 10,100 | 0.42 | 46.1% | 44,053 |
| 49 | 福島県 本宮市 | 14,633 | 9,300 | 0.66 | 12.2% | 30,236 |
| 50 | 長野県 大町市 | 14,667 | 11,700 | 0.44 | 20.3% | 26,029 |
※ 人口2万人以上・財政力指数0.3以上・地価公示データありの自治体が対象。地価は国土交通省地価公示の最新データに基づく。
4. 傾向分析
地方圏の手頃さ
ランキング上位には、東北・北関東・九州など地方圏の自治体が多く見られます。これらの地域は都市部と比べて地価が大幅に安く、同じ予算で広い土地・住宅を確保できます。近年は高速道路やインターネットの整備が進み、地方でも快適な生活環境が整いつつあります。
財政力と生活コストのバランス
地価が安くても財政力指数が高い自治体は、企業立地による税収があるケースが多く、住民の税負担は他の自治体と変わらないまま、充実した行政サービスを受けられます。生活コストと行政サービスの質のバランスが取れた、真に「コスパの良い」移住先と言えます。
空き家率との関係
地価が安い地域は空き家率がやや高い傾向にありますが、これは必ずしもマイナスではありません。空き家バンクを活用して格安で中古住宅を取得したり、自治体の改修補助金を利用してリノベーションするなど、空き家を活用した移住は近年注目されています。
5. 生活コスト以外に見るべき指標
生活コストの安さは移住先選びの重要な要素ですが、それだけでは十分ではありません。以下の指標もあわせて確認しましょう。
医療アクセス:人口あたりの医師数や病院数。安い地域でも医療が充実していれば安心して暮らせます。医療アクセスランキングもご覧ください。
教育環境:子育て世帯であれば、学校の充実度や教員比率も重要です。教育環境ランキングを参考にしてください。
雇用機会:リモートワークでない場合、地元での就職先の有無を確認しましょう。
将来性:人口増減率は地域の将来性を示す重要な指標です。人口増加率ランキングもあわせてご確認ください。
マチスコアでは子育て・医療・教育・財政・住環境・将来性の6軸総合評価で自治体を多角的に分析しています。総合的な視点で移住先を選びたい方は、診断ツールもぜひご活用ください。
6. 移住支援制度を活用したコスト削減戦略
国の「地方創生移住支援事業」
国は地方への移住を促進するため「地方創生移住支援事業」を実施しています。東京23区に在住または東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)から東京23区に通勤していた方が、対象地域に移住した場合に、世帯で最大100万円(単身は最大60万円)の移住支援金が支給されます。さらに、18歳未満の子ども1人につき最大100万円が加算される制度もあります。対象自治体や要件は年度によって変更される場合があるため、最新情報を内閣官房のウェブサイトや各自治体で確認してください。
自治体独自の上乗せ支援
国の制度に加えて、多くの自治体が独自の移住支援制度を設けています。住宅取得補助(新築・中古住宅の購入費用の一部を助成)、家賃補助(賃貸住宅の家賃を一定期間補助)、引っ越し費用の助成、お試し移住(短期間の体験居住)などがあります。これらを国の移住支援金と組み合わせることで、移住に伴う初期コストを大幅に軽減できます。特に空き家バンクを活用した物件は、改修補助金の対象となるケースが多く、住居費をさらに抑えられます。
制度活用の注意点
移住支援制度には居住年数の要件(「〇年以上居住すること」等)や申請期限、予算上限による早期終了などの条件があります。また、制度の内容や金額は年度ごとに変更されることがあります。移住を具体的に検討する段階では、必ず各自治体の移住・定住担当窓口に直接お問い合わせいただき、最新の制度内容と要件を確認してください。各自治体の移住支援情報は、移住・交流推進機構(JOIN)のウェブサイトでも検索できます。